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以下はその時、配布された資料です。
1、在宅介護の現状
これまで高齢者介譲というと、特別養護老人ホームや老人保健施設など「大規模施設」が、その中心的役割を果たしてきていた。
大規模な施設の場合では、「集団性」が重視され「個別性」が軽視されるという側面が指摘されてきており、要介護者の個々のニーズに応えら中る状況にはなく、介護の実状を知る人からは「人間扱いしていない」という批判が上がっている。
一方、今まで家族に頼ってきた「在宅での高齢者介護を社会全体で支える制度として「介護保険」が2000年4月から始まった。
しかし、その後の流れを見ると、「在宅介護を支える」ことを最重点において始まった介護保険制度も、特別養護老人ホームヘの入所を希望する人が増え続け、1施設あたり100〜300名が空きを待つという異常な状況が生れている。
この背景には、施設入所の割安感と在宅サービスの質及び量の脆弱さが指摘されている。特に、在宅介護を支える上で、最も重要な「短期生活介護事業」の量の少なさは「致命的」と言っても過言ではない状況にあるといえる。
短期生活介護は、高齢者を介護する家族にとって「介護を持続できるか否か」を左右する『要』であり、在宅介護を支援するためには『欠くことのできない事業』であることは、介護施設の空きを待つ異常な数字が物語っているように思う。
短期生活介護事業を「増やすべし」という提言に対して、行政は同事業の「特別養護老人ホーム化」を懸念(利用の長期化による保険財政への悪影響等)し、民間事業者の参入を認めておらず、量的には制度導入前の他の事業(デイサービスやグループホーム)に比べ、ほとんど増えていないのが実状である。
2、新しい流れ
厚生労働省の私的諮問機関である高齢者介護研究会が取りまとめた「2015年の高齢者介護(高齢者の尊厳を支えるケアの確立に向けて)」によると、それぞれの地域に「小規模で多機能」な施設を作ることが提案されており、今後は特別養譲老人ホームや老人保健施設などの大規模な施設によって「集団的に介護サービスの提供を受ける」だけではなく、高齢者が住み慣れた地域を「離れず」小さな単位の中で、「より個別的なサービスが受けられる」ことが高齢者のニーズに応えられるものであるとしている。
高齢者介護研究会の提言は、福祉先進国といわれているデンマークやスウェーデンにおいても、大規模な施設での集団的ケアから、住み慣れた地域の小さな単位での個別ケアの重要性が見直され、すでに大規模施設の解体が始まっているとの報告もあり、同じ流れとして捉えることができる。
これまでは、介護の『経済性』という視点から、大規模な施設の持つ「効率性」が介護の中心的役割を負ってきたといえる。しかし、要介護高齢者の劇的な増加と経済の低迷は『介護保険制度』を生み出し、経済的に「効率性」が高いとされていた「大規模施設」の在り方が疑問視されるようになってきている。
とくに、介護保険制度への大規模施設の及ぼす影響(介護報酬支払いの偏向による在宅サービスの不足や保険料の上昇等)は、制度の根幹を「脅かす存在」となっており、介護保険の導入は、これまでの大規模施設の「経済性」、「効率性」という『価値観』を一変させる出来事であったといえる。と同時に、介護の中心的役割が「大規模」施設から、地域の中にある「小規模・多機能」型の施設へと大きく転換する新しい流れがすでに始まっていることは確かなようである。
3、これからの在宅介護
「小規模・多機能」型の施設が、地域の中に定着すると大きな変化が予測される。
大別すると @高齢者や家族の願いが実現される
A地域が介護に閑心を持つ
B介護保険制度の安定
に分けられると思われる。
@では、「住み慣れた地域の中で暮らし続けたい」という高齢者の願いが実現され馴染みの関係を維持しながら、安心してサービスを利用することができる。また、家族にとっても、さまざまなサービスが一体的に利用できる施設の存在は、在宅での介護を継続して行くためにも大きな支えになるものと思われる。
さらに、「小規模化」は、高齢者一人ひとりのニーズを受け止めやすくなり、人権や尊厳が確保された介護サービスの提供が可能となる。
Aでは、これまでの介護は「地域」から切り離された形で行なわれていたために、介護者への「誤解」や「偏見」が見られたが、地域の中に『介護の拠点』が移ることにより、住民の関心や理解が深まり、ボランティア活動が活発になるなどの効果が期待される。
Bでは、例えば、家族が介護に疲れたなどの理由で、短期生活介護を利用させたい場合に、地域の中に「居心地の良い」施設があれば、高齢者も家族のすすめを拒否すようなことも少なくなるなど、在宅での介護の継続が可能となる『環境づくり』が可能になると考えられる。そうすることにより、大規模施設は介護度の重い高齢者の介護を受け持つ場になり、介護施設の建設や増床の必要性も薄まり介護保険制度への負担軽減が図られるなどの変化が予測される。
4、新しい試み
NPO法人前橋・在宅ケアネットワークの会では、一人暮らしや高齢者世帯で老後に大きな不安を抱えている人たちを対象に、住み慣れた地域のなかで「共生して暮らせる」小規模な集合住宅づくりをめざしている。
この共生の場は、ボランティアによって運営され食事の提供や買物等生活に必要な支援を行なうものであり、要介護状態になってもヘルパーなどの介護保険のサービスを利用しながら暮らし続けられるというものである。と同時に、地域の駒染みの仲間が訪ねてきて夕食を一緒に食べて帰っていくというデイサービス的機能や、非常時のショートステイ的な機能、学童が立ち寄って一緒に遊べる機能を備えたものを考えている。
私たちは、この共生の場を「いきいき館」と名付けており、介護保険対象となっても施設ではなく「住み慣れた地域のなかで暮らし続けていきたい」という多くの高齢者の願いを真正面から受けて、この計画をぜひ実現させたいと思っている。
この計画は、財政的に大規模な特別養護老人ホームをたくさん整備することが困難という経済状況と、家では介護の継続が難しく特別養護老人ホームに入所させたいという家族の今日的課題、そして「老人ホームには入りたくない」という高齢者の長年の願いを一挙に解決するものと考えている。また、地域のなかにこのような施設があることにより、住民の「介護」への理解や関心は深まるなどの効果も期待される。
今後、増え続ける要支援高齢者を支え、要介護の状態にさせないための取り組みは大規模な従来型の施設ではなく、住み慣れた地域の中にあると考えている。
私たちの会は、前橋市を18地区に分けて活動を行なっており、地区に1ヵ所ずつ「小規模・多機能」の施設が整備されれば、大規模な介護施設を作るための自治体の財政負担や介護保険の財政を圧迫するような状況を減少させることができると考えており、大規模な施設だけに頼らずに、地域に住み続けられる『前橋型地域ケアシステム』は全国の先駆けとして期待されるものになると考えている。
5、今後の検討課題
地域の中にこれらの施設を整備していく場合、いくつかの重要な課題が残されている。
第一には、建設用地の取得である
市内周辺には使われなくなった農地等があり、当会の会員の中にもこれらの土地を所有している人もいると考えられるので、機関紙『ささえあい』で募集を行なうと同時に自治体が取得している土地を借りるという方法も視野に入れた検討が必要と思われる。(賃借料を支払う)
第二に、建築費用の捻出である.
建築には多額の費用が必要であり、その捻出方法の検討が必要となる。(例えば、NPO債の発行等が可能なのか等の具体的検討及び返済計画等)
また、この事業を立ち上げるために自治体の協力(補助金等)は不可欠と考えられるが、「納得」してもらえる働きかけが重要と思われる。
第三に、小規模・多機能型施設における基本的方針である。
例えば、どの程度の人を対象にするのか。どの程度の生活環境を整備するのか。どのような体制で運営を行なうのか(従事者の体制及び給与面、利用者の負担金)等の検討も重要ではないかと思われる。
この報告に関して、さらに「いきいき館構想」を具体化し、実現させるため、次回2月16日の例会においても引き続き討議されることとなりました。
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